バイオ・メディカル

ポリオーマウイルス免疫療法の対訳学習終了(気づき・疑問点など)

2024年になりました。

大晦日から6日間は勉強できず、1月5日から通常運転です。

年明け早々、地震や事故など悲しいニュースが続いています。自分や家族が元気に過ごせているのは当たり前ではないのだと改めて気づかされます。

また、個人的には「はやく結果を出さなければ」と焦りを感じる出来事がありました。これまでのような緩いペースではダメだなと。

やみくもに焦るのは良くないですが、時間を圧縮して螺旋階段をのぼらなければなりません。

ポリオーマウイルス免疫療法の対訳学習

免疫療法関連の、以下の明細書の対訳学習が終わりました。

【公表番号】特表2022-541925(P2022-541925A)
【公表日】令和4年9月28日(2022.9.28)
【発明の名称】ポリオーマウイルスのための免疫療法

この記事では、気づいた点や疑問に感じた点を中心にまとめます。

※明細書の内容を掘り下げて学習するための題材として、公開訳を使用しています。公開訳の誤訳を指摘することを目的とはしていません。

気づき・疑問点

reproduce

For example, initial JCV infection may occur via the tonsils or the gastrointestinal tract and remain latent in the gastrointestinal tract, and possibly in the lymphoid organs, neuronal tissue, and kidney, where virus continues to reproduce and shed viral particles.

公開訳:例えば、初期のJCV感染は、扁桃体又は胃腸管を介して起こることがあり、胃腸管、場合によってはリンパ器官、神経細胞組織、及び腎臓で潜伏したままであり、そこでウイルスはウイルス粒子を再生産し、流出し続ける。

ウイルスの感染サイクルについて複数のサイトを参考にすると、「ウイルス粒子を複製し、放出する」という表現の方がしっくりきます。

自律的な増殖ができないウイルスは、宿主となる細胞に侵入し、宿主細胞内でウイルス粒子が「複製」されます。

具体的には、DNA(またはRNA)が複製され、かつそのDNAの情報に基づいてウイルスタンパクが合成され、ウイルス粒子が組み立てられます(アセンブリ)。

新しいウイルス粒子は、宿主細胞外へと「放出」されます。宿主細胞から「流出」するというよりは、宿主細胞を溶かして外に放出されるというイメージを持っています。

以下のように訳出するのはどうでしょうか。

例えば、初期のJCV感染は、扁桃体又は胃腸管を介して起こることがあり、胃腸管、場合によってはリンパ器官、神経細胞組織、及び腎臓で潜伏したままであり、そこでウイルスはウイルス粒子を複製し、放出し続ける。

“reproduce”を「複製」、そして”shed”を「放出」としました。

from

次は”from”についてです。3つの文を挙げます。

①sample from the subject

In other aspects, provided herein is a method of identifying a subject suitable for a method of treatment provided herein ( e.g ., administration of CTLs, APCs, or vaccine compositions provided herein) comprising isolating a sample from the subject (e.g., a blood or tumor sample) and detecting the presence of an epitope provided herein, or a nucleic acid encoding an epitope provided herein.

公開訳:他の態様では、対象由来の試料(例えば、血液又は腫瘍試料)を単離すること、本明細書において提供されるエピトープ又は本明細書において提供されるエピトープをコードする核酸の存在を検出することを含む、本明細書において提供される処置方法(例えば、本明細書において提供されるCTL、APC、又はワクチン組成物の投与)に適した対象を同定する方法が本明細書において提供される。

②epitopes from antigens

In certain aspects, provided herein are polypeptides ( e.g ., isolated polypeptides and/or recombinant polypeptides) comprising a plurality of epitopes from BKV or JCV antigens (e.g., epitopes from large T-antigen (LTA), small T-antigen (STA) or major capsid protein VP1 viral antigens, such as those epitopes listed in Tables 1, 2, 3 or 4), preferably the epitopes set forth in Table 1.

公開訳:特定の態様では、BKV又はJCV抗原に由来する複数のエピトープ(例えば、大型T抗原(LTA)、小型T抗原(STA)又は主要カプシドタンパク質VP1ウイルス抗原に由来するエピトープ、例えば表1、2、3又は4に列挙されたエピトープなど)、好ましくは表1に記載されるエピトープを含むポリペプチド(例えば、単離されたポリペプチド及び/又は組換えポリペプチド)が本明細書において提供される。

③from viruses

In some embodiments, the population of CTLs collectively comprise T cell receptors that recognize T cell epitopes from any combination of JCV, BKV, EBV, CMV, ADV and/or from other viruses.

公開訳:一部の実施形態では、CTLの集団は、JCV、BKV、EBV、CMV、ADVの任意の組み合わせ由来及び/又は他のウイルス由来のT細胞エピトープを認識するT細胞受容体を集合的に含む。

この明細書において、公開訳では、”from”を「~由来の」と訳出していることが多いです。

公開訳をみる前の自分なら、どう訳出していただろうかと考えると、

①の”isolating a sample from the subject”は、

・公開訳:対象由来の試料を単離する
・自分:対象から試料を単離する

②の”a plurality of epitopes from BKV or JCV antigens”は、

・公開訳:BKV又はJCV抗原に由来する複数のエピトープ
・自分:BKV又はJCV抗原複数のエピトープ

③の”T cell epitopes from any combination of JCV, BKV, EBV, CMV, ADV and/or from other viruses”は、

・公開訳:JCV、BKV、EBV、CMV、ADVの任意の組み合わせ由来及び/又は他のウイルス由来のT細胞エピトープ
・自分:JCV、BKV、EBV、CMV、ADVの任意の組み合わせ及び/又は他のウイルスT細胞エピトープ

と訳出していたでしょう。

②の公開訳をみたとき、「抗原に由来するエピトープ」という表現に違和感がありました。

「エピトープは、抗原を構成する一部であって、抗原に由来するものではないのでは?」と考えたからです。

『新明解国語辞典 第八版』によれば、「由来」は、「起源を尋ねると、そこまでさかのぼることが出来ること」を意味します。

とすると、上に挙げた①や③については「由来の」で納得できます。

それに、考えてみると「単離する」は混ざり合った物質から特定の物質を分離することなので、①に対して自分が考えた「(ヒトなどの生体の)対象から試料を単離する」という表現は不自然でした。

②については、「JCV(ウイルス)抗原に由来するエピトープ」というより、「ウイルス抗原からのエピトープ」や「ウイルス抗原のエピトープ」とする方がしっくりきます。

しかし、調べてみると「がん抗原由来のエピトープ」や「タンパク質抗原由来のエピトープ」などという表現もみかけます。

エピトープが独立して存在している状態であれば、「ウイルス抗原由来のエピトープ」という表現で納得できます。

また、以下のように、処理によって複数のエピトープが組み合わされている場合があることを考えると、「由来の」とする方がよいのでしょうか。

In some embodiments, provided herein is a polyepitope polypeptide (i.e., a single chain of amino acid residues comprising multiple T cell epitopes not linked in nature) comprising two or more of the epitopes described herein.

公開訳:一部の実施形態では、本明細書に記載の2個以上のエピトープを含むポリエピトープポリペプチド(すなわち、天然には連結されていない複数のT細胞エピトープを含むアミノ酸残基の単一鎖)が本明細書において提供される。

treatment is administered

Conjunctive therapy includes sequential, simultaneous and separate, and/or co administration of the active compounds in such a way that the therapeutic effects of the first agent administered have not entirely disappeared when the subsequent treatment is administered.

公開訳:併用(conjunctive)療法は、投与された第1の薬剤の治療効果がその後の治療が投与されたときに完全に消失しないような方法での、活性化合物の逐次的、同時及び別々、並びに/又は共投与を含む。

“treatment is administered”について。

「治療が投与された」は、日本語として不自然に感じます。

「治療を行う」や「投与を行う」と訳出するのはどうでしょう。

あるいは、以下のように「治療薬を投与する」とすると日本語としては自然だとは思いますが、少しやりすぎでしょうか?

併用(conjunctive)療法は、投与された第1の薬剤の治療効果が、その後の治療薬が投与されたときに完全に消失しないような方法での、活性化合物の逐次的、同時及び別々、並びに/又は共投与を含む。

まとめ

今回の明細書は、公開訳に対して違和感を持ったり、疑問に感じたりすることはさほど多くありませんでした。

次の明細書は、時間を計測しながら自力翻訳します。

自力翻訳後、公開訳との比較が終われば、ブログにまとめます。

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