この記事では、(記事のタイトルの通りですが)X線撮影装置の対訳学習が終わった報告と、明細書中の”Example”の訳について疑問に感じることがあるため、現時点での記録として気づきを書きます。
X線撮影装置の対訳学習
以下2件の明細書の対訳学習が終わりました。
【公表番号】特表2023-534869(P2023-534869A)
【公表日】令和5年8月14日(2023.8.14)
【発明の名称】ターゲットアセンブリ、X線装置、構造測定装置、構造測定方法、及びターゲットアセンブリの変更方法
【公表番号】特表2023-530080(P2023-530080A)
【公表日】令和5年7月13日(2023.7.13)
【発明の名称】X線検査システム、X線画像化アクセサリ、検体支持体、キット、及びX線検査システムを使用する方法
どちらの明細書も、主にX線装置の構成と各要素の特徴について説明されている明細書だったので、内容としては読みやすかったです。
読む順番について
いつもは「背景技術→発明の概要→図面の簡単な説明→発明を実施するための形態→(実施例)→請求項」の順で読むのですが、
今回は「図面の簡単な説明→発明を実施するための形態→背景技術→発明の概要→請求項」の順に読みました。
というのも、対訳学習をする前に読んだ日本語明細書が、いつもの順番だと何とも読みにくかったのです。
その明細書も今回の2件と同じように、主にX線装置の構成について説明されている内容だったのですが、
図面中の装置の各構成部品が何を指していて、かつどう機能をするのかを読む前に「発明の概要」を読んだわけですから、分かりにくいのも当然でした。
そこで、今回は「発明の概要」より先に「図面の簡単な説明」と「発明を実施するための形態」を読んだところ、明らかに読みやすくなりました。
“Example”の訳について
これまでの対訳学習を通じて、疑問に感じていたことがあります。
それは、”Example”を「例」と訳出するか、「実施例」と訳出するかについてです。
ここでいう”Example”とは、「●●の例としては、~が挙げられる」のような「例」ではなく、文頭などで”In this example,”などと記載されている場合の”Example”です。
英語明細書中に見出しとして”Examples”がある場合、以降に具体的な実験の手順などが書かれているため「実施例」であることが分かります。
しかし、”Examples”の見出しがないにも関わらず、明細書中の”Example”が「実施例」と訳されているものもあります。
すべての”Example”が「実施例」となっているわけではなく、明細書によって、「この例では」などと訳されている場合もあれば、「この実施例では」と訳されている場合もあります。
実施形態の「例」と「実施例」は異なるのか?と疑問に感じ、特許の実施例について調べました。
実施例=実施形態を具体的に説明したもの
調べたところ、実施例は「実施形態を具体的に説明したもの」であり、「発明者が行った実験の手順やその結果」が示されているようです。
ここで、以下の明細書から一部を挙げます。”In this example,”を太字で示しています。
【公表番号】特表2023-530080(P2023-530080A)
【公表日】令和5年7月13日(2023.7.13)
【発明の名称】X線検査システム、X線画像化アクセサリ、検体支持体、キット、及びX線検査システムを使用する方法
Figure 1 shows a schematic of an x-ray inspection system 100. The operation of such an x- ray inspection system 100 is described in more detail in European patent: EP1766381 B1. The x-ray inspection system 100 comprises an x-ray source in the form of an x-ray tube 10 and an x-ray detector 12. Between the x-ray tube 10 and the x-ray detector 12 is a stage 14 moveable in the X,Y and Z directions by suitable slideways and under the control of electric motors. The stage 14 is formed by an open framework (not shown in Figure 1) and is adapted to support the base 19 of a sample support positioning assembly 18. A sample support 20 is coupled to a frame 22 of the sample support positioning assembly 18. A sample to be inspected can be received in the sample support 20. The sample received in the sample support 20 is moveable with respect to the x-ray tube 10 and the x- ray detector in the X-Y plane and in the Z axis by moving the stage 14. The sample support positioning assembly 18 further comprises a rotational drive 28 coupled to a mechanical interface of the sample support. The rotational drive 28 can be used to rotate the sample support 20 about a rotational axis perpendicular to the Z-axis. The x-ray inspection system 100 also comprises a controller including an image processor. The controller is not shown in the figures. The image processor is connected to the x-ray detector 12 to receive data. The image processor is configured to perform a computed tomography calculation to generate a three dimensional reconstruction of the sample based on a series of two-dimensional images captured by the x-ray detector with the sample support at different rotational positions. The controller is also used to control the movement of the stage 14 in the X, Y and Z directions as well as the rotation of the rotational drive 28. In this example, the sample support positioning assembly 18 is a sub-assembly that can be retrofit to an existing x-ray inspection system 100.
図1は、X線検査システム100の略図である。かかるX線検査システム100の作用が欧州特許第1766381(B1)号に詳細に記載されている。
X線検査システム100は、X線管10の形態をしたX線源及びX線検出器12を含む。X線管10とX線検出器12との間には適当な滑り又は案内面によってかつ電気モータの制御下でX方向、Y方向及びZ方向に動くことができるステージ14が設けられている。ステージ14は、オープンなフレーム構造体(図1には示されていない)によって形成され、このステージは、検体支持体位置決め組立体18のベース19を支持するようになっている。検体支持体20が検体支持体位置決め組立体18のフレーム22に結合されている。検査されるべき検体は、検体支持体20内に受け入れられるのが良い。検体支持体20内に受け入れられた検体は、ステージ14を動かすことによって、X線管10及びX線検出器に対してX‐Y平面内でかつZ軸方向に動くことができる。検体支持体位置決め組立体18は、検体支持体の機械的インターフェースに結合された回転駆動装置28をさらに含む。回転駆動装置28は、検体支持体20をZ軸に垂直な回転軸線回りに回転させるよう使用できる。X線検査システム100は、画像プロセッサを含むコントローラをさらに含む。コントローラは、図面には示されていない。画像プロセッサは、データを受け入れるようX線検出器12に連結されている。画像プロセッサは、検体支持体が異なる回転位置にある状態でX線検出器によって捕捉された一連の二次元画像に基づいて、検体の三次元再構成像を生じさせるためにコンピュータ断層撮影計算法を実施するよう構成されている。コントローラはまた、X方向、Y方向及びZ方向におけるステージ14の運動を制御するとともに回転駆動装置28の回転を制御するために用いられる。この実施例では、検体支持体位置決め組立体18は、既存のX線検査システム100にレトロフィットできるサブアセンブリである。
この明細書には、見出しとして”Examples”はありませんし、具体的な実験の手順や結果を示しているわけでもありません。
しかし、「X線検査システムの、ある実施形態における構成を発明者が実施した具体的な例」と考えると「実施例」であるといえます。
見出しとして”Examples”があるのは、サンプルをいくつか準備して化学実験を行う場合であって、今回のように、各実施形態で装置の構成例を説明する場合は見出しをつけないのだろうか?
調べた上で、現時点では、見出しとして”Examples”がなくとも、発明者が実施形態を具体的に説明している例であれば「実施例」と訳出して問題ないという考えに至りました。
ただ正直なところ、「発明の実施の形態を具体的に示したもの」といっても、その「具体的に」がどの程度からを指すのかが分かりにくい…と感じます。
次の予定
今日から、以下の明細書の自力翻訳を開始します。
【公表番号】特表2023-519681(P2023-519681A)
【公表日】令和5年5月12日(2023.5.12)
【発明の名称】SYSTEMS AND METHODS FOR X-RAY IMAGING TISSUE SPECIMENS
1時間ごとの処理ワード数を計測し、自力翻訳後は公開訳と比較して、疑問点などをブログ記事に書きます。
最後に
前回のブログ記事も、ビデオセミナーで取り上げていただきありがとうございました。また、講座卒業生の方の報告は、今の自分にとってかなり勇気づけられる内容でした。
講座の勉強を本格的に始めてから、もうすぐ1年が経過します。
稼ぐための勉強を継続します。