vehicleについて自分なりに調査した内容をまとめます。

vehicleとは

vehicleとは、以下のような物質をいいます。

  1. 有効成分を内包したり有効成分と結合したりして、これを輸送する
    …単体としての役割をもつ
  2. 有効成分が投与され得る状態となるように媒介する
    …媒体としての役割をもつ

「物質」と書きましたが、具体的な物質名を指しているのではなく、「この物質は vehicleとして機能している」という役割的な名称です。

以下に詳しくまとめます。

担体としてのvehicle

①は、そのまま「運ぶもの」というイメージです。

有効成分を内包したり有効成分と結合したりして、体内での放出速度・分布・標的化などを制御します。

例として、ナノ粒子やエクソソームが挙げられます。

こちらの記事が参考になります。

https://www.sciencedirect.com/topics/pharmacology-toxicology-and-pharmaceutical-science/drug-vehicle

以下のように記載されています。

Drug vehicles also known as drug carriers are substances that control the drug release.

vehicleが、薬剤の放出を制御するために使用され、有効成分を運ぶための「担体(キャリア)」であることが分かります。

この文脈では、「drug vehicle」と「carrier」がほぼ同じ意味合いで使用されていると考えて良さそうです。

vehicle, vector, carrier

ここで、vectorとの関係をみてみます。

こちらのサイトに、vectorの定義として以下の記載があります。

Vectors: A vehicle (e.g. a plasmid) used to transfer the genetic material such as DNA sequences from the donor organism to the target cell of the recipient organism.

vectorが、ドナーからレシピエントの細胞に遺伝物質を移す(導入する)ためのvehicleであると記載されています。「運ぶもの(担体)」であるということですね。

なので、この文脈においては、「carrier」にも置き換え可能であると思われます。

媒体としてのvehicle

次に、②は、有効成分を投与できる状態にするために添加される媒体・基剤を総称したものです。

「投与できる状態にする」とは例えば以下のようなことです。

・疎水性の有効成分に油性基剤を加えて半固形製剤であるクリームを調製することで、皮膚に均一に塗布できるようにする

vehicle = 油性基剤(例:ワセリン、パラフィン)

・有効成分を緩衝液に溶解・懸濁させて注射用製剤を調製することで、液体製剤として注射投与可能にする

vehicle = 緩衝液(例:生理食塩水、リン酸緩衝液)

つまりvehicleは、投与が成立する条件を満たすための「媒体」となっています。

vehicleとexcipient

ここで、vehicleとexcipientの関係についてみてみます。

excipientは、「医薬品を製造する際に、成型しやすくしたり服用しやすくしたりするために有効成分に添加される補助剤(添加物)」を総称したものです。

媒体としてのvehicleの意味と似ている感じがします。

実際のところ、vehicleとexcipientは部分的に重なりますが完全な上位概念・下位概念の関係ではないようです。

重なる例としては、上にも挙げたクリームの基剤(例:ワセリン、パラフィン)や注射製剤の緩衝液(例:生理食塩水、リン酸緩衝液)、経口懸濁液の懸濁剤(例:メチルセルロース)があります。

いっぽうで、着色剤(視認性や識別性のために添加)、滑沢剤(打錠補助や金型への付着防止のために添加)、結合剤(錠剤形成のために添加される場合)はexcipientであってもvehicleとはいえません。

製剤を成立させるために添加される(excipient)のか、投与を成立させるのために添加される(媒体としてのvehicle)のか、という焦点の違いがあると思われます。

excipientについては過去に係り受けミスの原因となったことがあり、以下の記事にもまとめています。

【誤訳メモ】慢性C型肝炎 免疫療法の対訳学習(自分訳の改善点)前回に引き続き、自力翻訳した以下の明細書について記事を書きます。 【公表番号】特表2012-503011(P2012-503011A)...

溶媒としてのvehicle

vehicleが「溶媒」と表されることがあります。

これは、先ほどの②の「媒体」としてのvehicleが、特定の溶媒である場合に使用されているようです。

以下のように1と2とを投与する試験での「vehicle control」の日本語訳としては「媒体対照」と「溶媒対照」の両方が使用されています。

  1. 有効成分+vehicle
  2. vehicleのみ(vehicle control)

ではsolvent(溶媒)とは何が違うのか?という疑問が出てきます。

vehicleとsolvent

vehicleとsolventは以下のように焦点を当てているものが異なるのではないかと思います。

・solvent:有効成分を「溶かす」ことに焦点を当てている。
・vehicle:有効成分を「投与可能な状態で存在させる」ことに焦点を当てている。

つまりvehicleは、有効成分ではない媒体/基剤/担体であって、有効成分を溶かしている場合もあれば溶かしていない場合もある。

なのでvehicleとsolventは100%同義ではない(vehicle ≠ solvent)であると思われます。

まとめ

今回は、vehicleについてまとめました。

調べてみると、様々な用語が関連していることが分かって面白いですね。

※現段階での調査のまとめであり、今後、記事の内容を修正する可能性があります。