バイオ・メディカル

抗原性(antigenicity)と免疫原性(immunogenicity)の違いとは

今回は、抗原性(antigenicity)と免疫原性(immunogenicity)の違いについて書きます。

ScienceDirectには、以下のように記載されています。

Antigenicity refers to an interaction between antigenic determinants (epitopes) and antibodies or specific T cell receptor for antigen. Immunogenicity reflects an ability to trigger an immune response (Crumpton, 1974).

これをもとに調査した結果を以下にまとめます。

抗原性と免疫原性の違い

抗原性(antigenicity)

抗原やハプテンの、免疫系に認識され抗体と特異的に結合する能力をいう。

ただし、抗原性をもっていても、免疫応答を引き起こす能力があるとは限らない。

抗原性があるが免疫応答を引き起こさない物質を「不完全抗原(incomplete antigen)」または「ハプテン(hapten)」という。

ハプテン(hapten)

抗体に認識され結合することはできる(=抗原性がある)が、単独では免疫細胞の活性化(抗体産生など)を惹起することができない(=免疫原性がない)物質のこと。

免疫原性がないため、「不完全抗原」とも呼ばれる(対して、単独でも抗原性とともに免疫原性を持つ細菌やタンパク質などの抗原は「完全抗原」と呼ばれる)。

ハプテンは血清タンパク質や細胞膜タンパク質などと結合することで完全抗原となる。

ハプテンと結合して免疫原性を発揮するタンパク質は担体と呼ばれる。

ハプテンの例

ハプテンの例として、ペニシリン系抗生物質がある。これが体内の血清タンパク質と結合して抗原となり、アレルギー反応などの免疫反応を引き起こす。

免疫原性(immunogenicity)

抗原やハプテンが、抗体産生や細胞性免疫などの免疫応答を引き起こす能力をいう。

単独でも抗原性とともに免疫原性を持つ細菌やタンパク質などの抗原を「完全抗原(complete antigen)」という。

同じ意味として使用されている

上記から分かるように、「抗原性」と「免疫原性」は確かに違う意味を持ちます。

しかし、同義に使用されることもあるようです(「抗原性」が「免疫原性」の意味として使用されるなど)。

実際に、Access Scienceで「antigenicity」を調べてみると、以下のように記載されています。

antigenicity
Ability of an antigen to induce an immune response and combine with specific antibodies or T-cell receptors.

「Ability of an antigen to induce an immune response」と記載されていることから、「immunogenicity」の意味も包含しているようです。

特許明細書でも調べてみました。例えば、以下はどうでしょう。

Current PE-based immunotoxins are highly immunogenic.
…Patients with solid tumors, however, usually develop neutralizing antibodies to PE-based immunotoxins within weeks after the first administration.
…Nonetheless, it would be desirable to have less antigenic forms of PE-based immunotoxins that would reduce patients’ immunogenic responses.

PE(Pseudomonas exotoxin A、緑膿菌毒素)のantigenicityが低減されると、PEを含むイムノトキシンに対する免疫応答(中和抗体の産生)が低減される、というようなことが記載されています。

確かに、抗体と結合できる能力(本来の「抗原性」の意味)を低減する=抗原として認識されにくい→新たな抗体産生が起こりにくい(免疫原性応答を低減する)と考えることもできますが、

抗体と結合できる能力を低減するだけで必ずしも直接的に免疫原性応答が低減されるとは限りません。

この「less antigenic」は、「less immunogenic」と同じような意味で使用されているように思います。

おそらく、「antigenicity」、「immunogenicity」の2つの用語は、「免疫系に認識される能力」として広義に使用されてきたのかもしれません。

まとめ

同じ意味で使用されている2つの用語であっても、調べてみると違う概念をもつことが分かります。

AIを超える翻訳者であり続けるためには、一語一語をどう訳せばよいのか(あるいは訳さない方がよいのか)を考えて翻訳しなければならないと感じています。

そのために今回のような調査を欠かさず継続します。