半導体分野のある特許明細書を読んだのをきっかけに「couple」について改めて調べてみたので、ブログ記事にします。
「couple」のイメージ
「couple」は、「結合する」と訳されることが多いです(生化学分野では「共役する」と訳すことも)。
「couple」のイメージは、「2つのものを合体させて(結びつけて)1つにする」です。
「couple=結合する」か?
題材は、こちらの特許明細書です。以下のように記載されています。
In the example, each one of the sample and hold circuits included in the array of sample and hold circuits 118 is coupled to a corresponding one of the pixel cells 104 of the pixel array 102 in the pixel die 114 through a respective pixel level hybrid bond 106 at an interface between the pixel die 114 and the logic pixel die 116 , which provides a voltage domain global shutter image sensor in accordance with the teachings of the present invention.
デバイス関連では、「couple:結合する」、「connect:接続する」といった訳し分けがなされることが多いです。
「結合」には、「2つ以上のものが合わさって1つになる」という意味があります。
この定訳から、上記の「coupled to」を反射的に「結合する」と訳してしまいそうです。
サンプルアンドホールド回路の各々は、ピクセルアレイ102の対応するピクセルセル104に結合されている
では、図を見てみましょう。

これは結合していると言っていいのでしょうか。
深堀りしてみます。
例1
Hybrid bondでcoupleされる
In the example, each one of the sample and hold circuits included in the array of sample and hold circuits 118 is coupled to a corresponding one of the pixel cells 104 of the pixel array 102 in the pixel die 114 through a respective pixel level hybrid bond 106 at an interface between the pixel die 114 and the logic pixel die 116 , which provides a voltage domain global shutter image sensor in accordance with the teachings of the present invention.
原文には、サンプルアンドホールド回路の各々が「pixel level hybrid bond 106」によって対応するピクセルセル104に「couple」されていると記載されています。
調べると、日本語訳としては「ハイブリッドボンディング(hybrid bonding)」というそのままのカタカナ語が多くヒットしますが、「ハイブリッド接合」も多く使われています。
関連の企業サイトで調べると、シリコンチップ同士を貼り合わせて両者を直接接続するといった表現が使用されています。
従来の「ワイヤーボンディング(細い金属製ワイヤでつなぐ)」や「フリップチップボンディング(ハンダの突起(バンプ)を介してつなぐ)」と異なり、ワイヤやバンプを使用せずに絶縁層(Sio2)+金属層(Cu)を同時に接合する技術です。
接合されて接続される
上記から、ハイブリッドボンディングによってチップ同士を物理的に結びつけるのが「接合」で、この接合によって両者が電気的に「couple(接続)」されているのだろうと思います。
2つが物理的に結びついているのなら、「結合」じゃないのか?という疑問も出てきます。
でも、完全に1つに融合しているというよりは、界面同士でピッタリくっついているというイメージなのだと考えます。
例2
もう1つ、「couple」が登場する文を挙げます。
In the example, the logic pixel die 116 includes an array of sample and hold circuits 118 coupled to the readout circuit 108.
これは、「読み出し回路108に結合されたサンプルアンドホールド回路のアレイ118」なのでしょうか。
図を見ると、サンプルアンドホールド回路のアレイ118が読み出し回路108に合体されて1つになっているいるようにはみえません。
「結合」が、2つ以上のものが合わさって1つになるという意味を持つのであれば、上記の「couple」に対して「結合」というのは不自然に感じます。
むしろ電気的な「接続」と考えるのが自然ではないでしょうか。
「接続する」から考える
では反対に、「接続する」を英語にする場合で考えます。
「接続する」に対しては「couple」と「connect」が互換的に使用されていますが、「couple」よりも「connect」の方が直接的な結びつきを持っていて、より広い意味を包含させたい場合には「couple」が使用されるようです。
このテーマについては色々な方が記事を書かれているので、気になる方は調べてみてください。
「接合」と「結合」
記事のテーマからは逸れますが、「hybrid bonding」の「bonding」についても少し書きます。
先ほどの一文に戻りますと、
In the example, each one of the sample and hold circuits included in the array of sample and hold circuits 118 is coupled to a corresponding one of the pixel cells 104 of the pixel array 102 in the pixel die 114 through a respective pixel level hybrid bond 106 at an interface between the pixel die 114 and the logic pixel die 116 , which provides a voltage domain global shutter image sensor in accordance with the teachings of the present invention.
ハイブリッド接合の「接合」に対して「bond」が使用されています。
接合には「joining」という定訳がありますが、半導体関連で英語で調べてみると「bonding」が使用されている印象です。
生化学分野では「bond=結合」とすることが多いので、機械的に「ハイブリッド結合」としてしまいそうです。
まとめ
今回は、「couple」についてまとめました。
定訳を機械的に適用するクセをつけると、思わぬ誤訳につながる可能性があることが分かります。
誤訳とまではいえなくとも、好ましくない訳語を選択することによって「この翻訳者は分かってないな」と思われるかもしれません。
用語の意味を、定着した訳語ではなく(「2つものが合体して1つになる」のような)イメージで持っておくことが大切だと感じます。

