バイオ・メディカル

イートモ英訳トレーニング

ブログの更新が少し空いてしまいました。

今月に入り、トライアルに応募しながら、着手せず残しておいたIBM対訳シリーズに取り掛かっていました(10日程度で終わらせました)。

現在、対訳のないレジスト関連の明細書を自力翻訳しています。対訳のない明細書の翻訳サンプルを作っていなかったためです。

しかし経験上、1日中明細書の翻訳だけというのは効率が悪いため、時間によって別のタスクを複数入れています。

最も集中できる朝は(翻訳前に)タスクA、疲れが出ている夜は(翻訳後に)タスクB、という感じです。

今回は、朝のタスクの1つである「イートモを使った英訳トレーニング」にて学びがありましたので記事にまとめます。

AUC0-t ratio of M1 to Drug A

以下の英訳練習です。

AUC0-tのM1/薬剤A比に単独投与と併用投与の間で差はなかった。

自分訳:There were no differences between monotherapy and combination therapy in the M1/Drug A ratio of AUC0-t.

イートモ:There were no differences in the AUC0-t ratio of M1 to Drug A between monotherapy and combination therapy.

上記から、自分の訳が日本語をそのまま英語に変換したものである(つまり内容を理解してから訳していない)と分かります。

内容理解

英文の内容を確認します。

該当するのはこちらのPMDA資料です。
Report on the Deliberation Results

Following a single oral dose of 1, 3, or 100 mg/kg of istradefylline alone or in combination with levodopa/carbidopa (250/25 mg/kg) in male rats (n = 3/group), the ratio of combination therapy to monotherapy for the area under the plasma concentration-time curve from zero to the last sampling point (AUC0-t) of istradefylline increased with increasing dose, i.e. 1.05, 1.19, and 1.34, respectively, whereas there were no differences in the AUC0-t ratio of M1 to istradefylline between monotherapy and combination therapy

上記によると、以下が検討されています(istradefyllineは、パーキンソン病に対するlevodopa/carbidopaの追加治療薬として承認されています)。

・istradefyllineの単独投与
・istradefyllineとlevodopa/carbidopaの併用投与

「M1」は、istradefyllineの主要代謝物(Metabolite)を示しているようです。

(イメージとして描きましたが)下図のように、istradefyllineと代謝物M1の濃度比は、時間tの経過とともに変化します。

ただし、やがて体外へと排出されることを考えれば直線的にM1の濃度が上がるわけではありません。

AUC0-t ratio of M1 to istradefylline」が示すものとして、以下を考えました。

・istradefylline/M1の濃度比と、時間tでプロットしたときのAUC0-t
・istradefyllineのAUC0-t/M1のAUC0-tの比

ちなみにAUC(Area Under the Curve)は「血中濃度曲線下面積」であり、横軸に時間、縦軸に血中薬物濃度をプロットした時の曲線下の面積を指します。

この値が大きいほど、バイオアベイラビリティ(生体内利用率)が高いということです。

原文を読むと、AUC0-tについて「istradefylline単独投与」と「istradefylline + levodopa/carbidopa併用投与」の比が、用量増加とともに増加していると書かれています。

Following a single oral dose of 1, 3, or 100 mg/kg of istradefylline alone or in combination with levodopa/carbidopa (250/25 mg/kg) in male rats (n = 3/group), the ratio of combination therapy to monotherapy for the area under the plasma concentration-time curve from zero to the last sampling point (AUC0-t) of istradefylline increased with increasing dose, i.e. 1.05, 1.19, and 1.34, respectively, whereas there were no differences in the AUC0-t ratio of M1 to istradefylline between monotherapy and combination therapy.

つまり「単独投与のAUC0-t」と「併用投与のAUC0-t」をそれぞれ算出したときの比を意味すると考えます。

一方、「the AUC0-t ratio of M1 to istradefylline between monotherapy and combination therapy.」とあります。

これは、「istradefyllineのAUC0-t」と「M1のAUC0-t」を算出した比を指しているのではないでしょうか。

以下のように理解しました。

・istradefylline単独投与と併用投与のそれぞれで用量(1、3、100 mg/kg)別にAUC0-tを算出。
・単独投与でのAUC0-tと併用投与でのAUC0-tとの比が、用量増加とともに大きくなった。
・M1とistradefyllineそれぞれのAUC0-tからその比を算出すると、単独投与と併用投与の間で差がなかった。

イートモ日本語訳が「AUC0-tのM1/薬剤A比」となっていることからも、「M1/薬剤A比と時間から算出したAUC0-t」ではなく、「M1とistradefyllineそれぞれで算出したAUC0-tの比」と考えられます。

結局のところ何が言いたいのかというと、「AUC0-tのM1/薬剤A比」という日本を単に英語に変換するのではなく、「M1と薬剤Aそれぞれで算出したAUC0-tの比」など落とし込んでから訳すべきだったということです。

至極当たり前のことなのですが、その当たり前のことが未だにできていない自分への戒めとして記録しておくために記事にしました。

最後に

今回の記事は、「イートモ」製作者である成田さんから、(イートモ対訳を一度に大量に公開しないことを条件に)許可を頂いた上で公開しております。

成田さん、ありがとうございます。

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