バイオ・メディカル

バイオマス関連の明細書1件を自力翻訳

以下の明細書の自力翻訳と、公開訳との比較が終わりました。

【出願番号】US2016/027130
【出願日】20160412
【発明の名称】CONVERTING BIOMASS TO FERMENTATIVE PRODUCTS

合計ワード数:8543w

この記事では、以下の項目に分けて、公開訳と自分訳を比較します。

  • 公開訳に対して気になったところ
  • 自分のミス&改善点
  • 疑問点

その前に、翻訳スピードと、見直しに要した時間をまとめます。

翻訳と見直しについて

翻訳

1時間ごとの翻訳ワード数を計測しました。その結果、1日ごとの翻訳ワード数と、平均翻訳ワード数は以下のようになりました。

・翻訳に要した合計時間:30時間

見直し

memoQのQA機能を使用しながら、翻訳作業を行ったWord上での見直しに約6時間、Just Right!7上での見直しに2時間、合計約8時間を見直しに使いました。

  • 作業期間:10月19~20日
  • memoQのQA機能を使用しながらWord上で見直し:6h10m
  • Just Right!7上での見直し:2h

Just Right!では、訳出時に漢字変換ミスをしそうなものをあらかじめ用語リストに登録した上でチェックしました。

例えば、「粘土」を「粘度」と記載してしまうミスを防止するために、「粘土では?」とアラートが出るようにしたり、「調整」に対して「調製では?」とアラートが出るようにしたりしています。

公開訳と自分訳の比較

記事の冒頭に記載した通り、以下の項目ごとに公開訳と自分訳を比較します。

  • 公開訳に対して気になったところ
  • 自分のミス&改善点
  • 疑問点

 

公開訳に対して気になったところ

with~removed

The various types of biomass include plant biomass (defined below), animal biomass (any animal by-product, animal waste, etc.) and municipal waste biomass (residential and light commercial refuse with recyclables such as metal and glass removed).

公開訳:様々な種類のバイオマスとしては、植物バイオマス(以下に定義)、動物バイオマス(動物副産物、動物廃棄物など)および都市ごみバイオマス(除去された金属やガラスなどのリサイクル可能な住宅や軽商業用ごみ)が挙げられる。

自分訳:様々な種類のバイオマスとして、植物バイオマス(以下に定義される)、動物バイオマス(動物副産物、動物廃棄物など)ならびに自治体廃棄物バイオマス(金属やガラスなどの再利用可能物質を除く、住宅および小型業務用廃物)が挙げられる。

まずは、”residential and light commercial refuse with recyclables such as metal and glass removed”についてです。

municipal waste biomassの例として、上記が挙げられています。

公開訳は、「除去された金属やガラスなどのリサイクル可能な廃棄物」が含まれると解釈しています。

一方、私は「再利用可能物質である金属やガラスを除く廃棄物」が含まれると解釈しています。

この文における”with~removed”のwithは、付帯状況のwith「~が~された状態で」や「~して」を意味するものであると考えます。

つまり「(再利用可能物質である金属やガラスは除いて)自治体廃棄物には、住宅および小型業務用廃物が挙げられる」ということではないでしょうか。

文の切れ目の判断

More importantly, the inventors have also discovered that when cellulolytic enzymes are used to breakdown oligomeric sugars and residual insoluble biomass materials or/and fermentative organisms are applied to convert sugars into various fermentation products, the presence of a solid acid catalyst does not inactivate the enzyme(s) and/ or the organisms.

公開訳:さらに重要なことに、本発明者らは、セルロース分解酵素を用いてオリゴマー糖を分解し、残留不溶性バイオマス物質および/または発酵生物を適用して糖を種々の発酵産物に変換する際に、固体酸触媒の存在によって酵素および/または生物が不活性化しないことも発見した。

自分訳:より重要なことに、本発明らはまた、オリゴマーの糖および残渣難溶性バイオマス材料を分解するためにセルロース分解酵素を使用した場合、または/および糖を様々な発酵産物に変換するために発酵性生物体を適用した場合、固体酸触媒の存在が、酵素(複数可)および/または生物体を不活性化させないことも見出した。

公開訳では、「オリゴマー糖」を分解し、糖を発酵産物に転換するために「残留不溶性バイオマス物質および/または発酵生物」を使用すると解釈しています。

私は、「オリゴマーの糖および残渣難溶性バイオマス材料」を分解し、糖を発酵産物に転換するために「発酵性生物体」を使用すると解釈しています。

公開訳の場合、残留不溶性バイオマス物質と発酵生物の両方またはどちらか一方が、糖を発酵産物に転換するということに違和感があります。

ここで言及されている”residual insoluble biomass”は、固体酸触媒によって前処理を行った後の残渣としてのバイオマスであり、これをさらに分解するためにセルロース分解酵素を使用するものと考えています。

吸着と吸収

Any suitable method of determining the Ho of a material may be used, such as the method using the adsorption of n-butyl amine from its solution in cyclohexane as set forth in Investigation of the Surface Acidity of a Bentonite modified by Acid Activation and Thermal Treatment, Turk. J. Chem., 2003; 27:675-681, the disclosure of which is hereby incorporated by reference in its entirety.

公開訳:材料のH0を決定する任意の適切な方法、例えば、Investigation of the Surface Acidity of a Bentonite modified by Acid Activation and Thermal Treatment, Turk. J. Chem., 2003; 27:675-681(その開示はその全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているシクロヘキサン中のn-ブチルアミンの溶液からn-ブチルアミンを吸収することを用いる方法が使用され得る。

自分訳:開示全体が参照として本明細書に組み込まれる、Investigation of The Surface Acidity of A Bentonite modified by Acid Activation and Thermal Treatment,Turk.J.Chem.,2003年;27:675-681に記述されているように、シクロヘキサン中n-ブチルアミン溶液からのn-ブチルアミンの吸着を使用する方法など、物質のH0を測定するあらゆる好適な方法を使用することができる。

H0は酸強度を示し、酸部位によって塩基の半分がプロトン化される能力を指します。つまり、固体酸触媒の表面にどれだけの塩基がadsorptionするかによって酸強度を求めるというものです。

ここで、n-butyl amineは、固体酸触媒の酸性部位にadsorptionする塩基としての役割を持ちます。

辞書の検索結果と明細書の内容から、このadsorptionは「吸収」ではなく「吸着」ではないかと考えます。

above

Alternatively, the solid acid may be in the form of anhydrous kaolin, which may be prepared by heating kaolin typically above 500 degrees centigrade.

公開訳:あるいは、固体酸は無水カオリンの形でもよく、これは通常、500℃を上回るカオリンを加熱することによって製造され得る。

自分訳:あるいは、固体酸は、一般に500℃超でカオリンを加熱することによって調製され得る、無水カオリンの形態であってよい。

公開訳は、カオリンがすでに500℃超である状態から加熱するように読み取れますが、「500℃超でカオリンを加熱する」であると考えます。

acidification

In another embodiment, the solid acid is bentonite, for example an acidified bentonite.

公開訳:別の実施形態では、固体酸はベントナイト、例えば、酸性ベントナイトである。

自分訳:別の実施形態では、固体酸は、ベントナイト、例えば酸性化ベントナイトである。

“acidify”として辞書に登録されている日本語訳は「酸性化」です。

“acidify”と”acidification”をCambridge Dictionaryで調べてみると、それぞれ以下のようでした。

acidify:to become an acid or to make something become an acid

acidification:the process of becoming an acid or the act of making something become an acid

上記から、「酸にされた(酸化された)ベントナイト」と解釈し、「酸化ベントナイト」としようかと考えたのですが、酸性化と酸化がどのように異なるのか引っかかり調べました。

結果、以下のサイトを参考にさせて頂いた上で「酸性化」としました。

https://macroscope.hatenablog.com/entry/2019/05/25/070117

“acidification”は、酸・塩基という軸で考えたときに酸性側にするということであって、必ずしも「酸」にするわけではないことから、「酸性」よりも「酸性化」の方が好ましいと考えました。

Chat GPTも同じ意見でした。

with①

As explained above the biomass is pre-treated with the solid acid catalyst.

公開訳:上記で説明したように、バイオマスは固体酸触媒と一緒に前処理される。

自分訳:上述したように、バイオマスは固体酸触媒で前処理される。

このwithの処理は、翻訳時に少し悩みました。

「前処理工程で、固体酸触媒とバイオマスを一緒に粉砕する」という別の一文があったからです。

そのため、ここでも「固体酸触媒と一緒に前処理」とすべきか迷いました。

しかし、固体酸触媒と一緒に粉砕することによって、バイオマスのセルロース画分およびヘミセルロース画分が固体酸触媒によってオリゴマーの糖へ加水分解されるので、「固体酸触媒によって前処理される」としました。

with②

10. The method according to any one of claims 1-9, wherein heat is applied during the pre-treatment step a) with biomass with solid acid catalyst.

公開訳: 前処理工程a)の間にバイオマスを用いて固体酸触媒に熱を適用する、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。

自分訳:前記前処理ステップa)の間に、固体酸触媒バイオマスに熱が適用される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。

こちらもwithの解釈についてです。

「バイオマスを用いて固体酸触媒を加熱する」という公開訳に違和感があります。

このwithは、「~と一緒に」という意味ではないでしょうか。

weight %

What is meant by “minimum of water” or “essentially dry” is the total water content from the biomass and the solid acid catalyst during the pre-treatment stage (step a) will range from about 0.1 to about 40 weight % water present, for example about 0.2 to about 25 weight % or about 0.5 to about 20 weight % and the weight % is based on the total weight of the biomass and solid acid catalyst.

公開訳:「最小限の水(含水率)」または「実質的に乾燥」とは、前処理段階(工程a)中のバイオマスおよび固体酸触媒からの全含水率が、約0.1質量%~約40質量%、例えば約0.2質量%~約25質量%または約0.5質量%~約20質量%の含水率の範囲であり、質量%はバイオマスおよび固体酸触媒の全質量に基づく。

自分訳:「最小限の水」または「実質的に乾燥した」とは、前処理段階(ステップa)の間のバイオマスおよび固体酸触媒からの総水分量が、約0.1~約40重量%の水が存在する範囲、例えば、約0.2重量%~約25重量%または約0.5重量%~約20重量%であり、重量%は、バイオマスおよび固体酸触媒の総重量に基づく。

“weight %”に対する訳語として好ましいのは「重量%」ではないかと考えます。

the organism, engineered or native

The fermentation conditions will vary depending about the organism, engineered or native.

公開訳:発酵条件は、設計された生物または自然の生物によって異なるだろう。

自分訳:発酵条件は、組換えであるか天然であるかに関わらず生物体によって様々であろう。

“organism, engineered or native”に対する訳出についてです。

公開訳は、「組換えか天然かによって異なる」と解釈し、私は「組換えか天然かに関わらず、生物によって異なる」と解釈しています。

この一文の前後に組換えか天然かによってどのように異なるのかについて記述がないことから、「組換えか天然かに関わらず」としました。

自分のミス&改善点

続いて、自分訳のミスを挙げます。

ground

Figure 3 is a bar graph showing a comparison of simultaneous saccharification and fermentation (SSF) with the dry ground saw dust sample and the liquid extract sample at equivalent biomass solid loading in Example 3.

公開訳:【図3】図3は、実施例3における同等のバイオマス固形分負荷での乾燥した磨砕鋸屑試料および液体抽出試料による同時糖化発酵(SSF:simultaneous saccharification and fermentation)の比較を示す棒グラフである。

自分:【図3】実施例3において、等量のバイオマス固体投入量で、土壌の乾燥鋸屑試料および液体抽出試料を用いた、同時糖化発酵(SSF)の比較を示す棒グラフである。

“ground saw dust”のgroundを「土壌の」としてしまった、完全な誤訳です。

土壌の鋸屑とは何なのか?と違和感は持ったのですが、「木材を処理した際に人工的に発生した木屑が地面に放置されたもの」と曲がった解釈をしました。

違和感から一歩踏み込むことを怠ったことが原因の誤訳です。

kaolin mixed with lignin byproducts

Additionally, there could be other potential uses of kaolin mixed with lignin byproducts such as separation of lignin to derive value chemicals from the lignin or use of the mixture of kaolin and extracted lignin as a filler.

公開訳:また、リグニン副生物と混合されたカオリンの他の可能性のある使用、例えば、リグニンから価値のある化学物質を得るためのリグニンの分離またはカオリンと抽出されたリグニンとの混合物の充填剤としての使用もあり得る。

自分訳:さらに、リグニンを分離してリグニンから価値のある化学物質を引き出す、またはカオリンと抽出リグニンの混合物を充填剤として使用するなど、リグニン混合カオリン副産物の他の利用可能な用途が存在し得る。

“kaolin mixed with lignin byproducts”を、「リグニン混合カオリン副産物」と訳出しました。

しかし、カオリンは固体酸触媒であって発酵の副産物ではないので、誤訳です。

along with

Typically, in such lignocellulosic material, the cellulose, hemicellulose, and lignin are bound together in a complex gel structure along with small quantities of extractives, pectins, protein, and ash.

公開訳:通常、このようなリグノセルロース系材料では、セルロース、ヘミセルロース、およびリグニンが、少量の抽出物、ペクチン、タンパク質、および灰とともに複合ゲル構造で結合される。

自分訳:典型的に、そのようなリグノセルロース材料では、セルロース、ヘミセルロース、およびリグニンは、複雑なゲル構造において互いに結合し、少量の抽出物、ペクチン、タンパク質、および灰分を併せ持つ

“along with”に対する訳についてです。

公開訳と比較すると、私の訳では、セルロース、ヘミセルロース、リグニンが他の物質(ペクチン、タンパク質、灰分など)と一緒にゲル構造を構成していることが読み取りにくいです。

疑問点

ここからは、公開訳と比較した上での疑問点を挙げます。

andとor

andやorが一文で複数回用いられている場合、必要に応じて「ならびに」や「もしくは」などとする必要があると思うのですが、訳出していて悩むことや、公開訳と合わないことがあります。

4つの文を挙げます。

例1

The solids used may include natural clays and minerals, metal oxides and sulfides, metal salts, and mixed metal oxides.

公開訳:使用される固体としては、天然粘土および鉱物、金属酸化物および硫化物、金属塩、および混合金属酸化物が挙げられ得る。

自分訳:使用される固体としては、天然粘土および鉱物、金属酸化物および硫化物、金属塩、ならびに混合金属酸化物を含んでよい。

上記は、「天然粘土および鉱物」、「金属酸化物および硫化物」、「金属塩」、and「混合金属酸化物」のグループに分かれているので、「ならびに」ではないかと考えました。

例2

In one embodiment the solid acid catalyst is a clay, an aluminosilicate, hydrated aluminosilicate or solid media treated with Bronsted or Lewis acids.

公開訳:一実施形態では、固体酸触媒は、粘土、アルミノケイ酸塩、水和アルミノケイ酸塩またはブレンステッド酸またはルイス酸で処理した固体培地である。

自分訳:一実施形態では、固体酸触媒は、粘土、アルミノケイ酸塩、水和アルミノケイ酸またはブレンステッド酸もしくはルイス酸で処理された固体媒体である。

この文は、「粘土」、「アルミノケイ酸塩」、「水和アルミノケイ酸」or「ブレンステッド酸orルイス酸で処理した固体培地」とグループ分けできるので、初めのorは「または」、2つ目のorは「もしくは」としました。

例3

For example, the microorganism can be a bacterium, e.g., a cellulolytic bacterium, a fungus, e.g., a yeast, a plant or a protist, e.g., an algae, a protozoa or a fungus-like protist, e.g., a slime mold, protists (e.g., animal (e.g., protozoa such as flagellates, amoeboids, ciliates, and sporozoa) and plant (e.g., algae such alveolates, chlorarachniophytes, cryptomonads, euglenids, glaucophytes, haptophytes, red algae, stramenopiles, and viridaeplantae)), seaweed, plankton (e.g., niacroplankton, mesoplankton, microplankton, nanoplankton, picoplankton, and femptoplankton), phytoplankton, and/or mixtures of these.

公開訳:例えば、微生物は、細菌、例えば、セルロース分解性細菌、真菌、例えば、酵母、植物または原生生物、例えば、藻類、原虫または真菌様原生生物、例えば、粘菌、原生生物(例えば、動物(例えば、原生動物、例えば、鞭毛虫、アメイボイド(アメーバ)、繊毛虫および胞子虫)および植物(例えば、藻類、例えば、胞状、クロロニトロセルロース、クリプトモナス、ユーグレナ藻、緑膿菌、ハプト藻、赤藻、ストラメノパイル海藻、および緑色植物亜界))、海藻、プランクトン(例えば、マクロプランクトン、メソプランクトン、マイクロプランクトン、ナノプランクトン、ピコプランクトン、およびフェムトプランクトン(femptoplankton))、植物プランクトン、および/またはこれらの混合物であり得る。一部の実施形態では、微生物は白色腐朽菌である。

自分訳:例えば、微生物は、細菌、例えば、セルロース分解細菌、真菌、例えば、酵母、植物もしくは原生生物、例えば、藻類、原虫もしくは真菌様原生生物、例えば、粘菌、原生生物(例えば、動物(例えば、鞭毛虫、アメーバ状生物、繊毛虫、および胞子虫などの原虫)ならびに植物(例えば、アルベオラータ、クロララクニオン藻、クリプトモナド、ユーグレナ藻、灰色藻、ハプト藻、紅藻、ストラメノパイル、および緑色植物亜界(viridaeplantae)などの藻類))、海藻、プランクトン(例えば、マクロプランクトン、メソプランクトン、ミクロプランクトン、ナノプランクトン、ピコプランクトン、およびフェムトプランクトン)、植物プランクトン、および/またはこれらの組み合わせであってよい。

この文は長い上にグループ分けが難しく、悩みました。

「植物もしくは原生生物、例えば、藻類、原虫もしくは真菌様原生生物」とするべきか?

または「植物または原生生物、例えば、藻類、原虫もしくは真菌様原生生物」とするべきか?など。

例4

8. The method according to claim 7, wherein the solid acid catalyst is selected from the group consisting of kaolinite, halloysite, attapulgite, monmoirllonite, illite, nacrite, dickite, annauxite, kaolin, metakaolin, bentonite, acidified betonite zeolites, titanium dioxide treated with sulfuric acid or methanesulfonic acid, aluminum oxide treated with sulfuric acid or methanesulfonic acid, alumina, alumina treated with sulfuric acid or methanesulfonic acid, vermiculite, muscovite mica and talc.

公開訳: 前記固体酸触媒が、カオリナイト、ハロイサイト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、イライト、ナクライト、ディッカイト、アナウキサイト、カオリン、メタカオリン、ベントナイト、酸性ベントナイトゼオライト、硫酸もしくはメタンスルホン酸で処理された二酸化チタン、硫酸もしくはメタンスルホン酸で処理された酸化アルミニウム、アルミナ、硫酸もしくはメタンスルホン酸で処理されたアルミナ、バーミキュライト、白雲母およびタルクからなる群から選択される、請求項7記載の方法。

自分訳:前記固体酸触媒が、カオリナイト、ハロイサイト、アタパルジャイト、モンモリロナイト、イライト、ネークライト、ディッカイト、annauxite、カオリン、メタカオリン、ベントナイト、酸性化ベントナイト、ゼオライト、硫酸またはメタンスルホン酸で処理された二酸化チタン、硫酸またはメタンスルホン酸で処理された酸化アルミニウム、アルミナ、硫酸またはメタンスルホン酸で処理されたアルミナ、バーミキュライト、白雲母およびタルクからなる群から選択される、請求項7に記載の方法。

公開訳はorがすべて「もしくは」としており、私は「または」としています。

係り受け①

By “solid,” it is meant a solid material, a semi-solid material, or any other material having a water content of less than about 15, 20, 25, 30 or 40 percent by weight.

公開訳:「固体」とは、約15質量パーセント、20質量パーセント、25質量パーセント、30質量パーセントまたは40質量パーセント未満の含水率を有する固体材料、半固体材料、または他の材料を意味する。

自分訳:「固体」とは、固体材料、半固体材料、または約15重量%、20重量%、25重量%、30重量%もしくは40重量%未満の水分量を有するあらゆる他の材料を意味する。

having a water content of less than about 15, 20, 25, 30 or 40 percent by weight.が何に係っているのか、についてです。

訳出時、公開訳のようにするかどうかを悩み、上記のようにしました。

しかしそれは、これまで読んだ明細書に「A、B、C、または●●である他の任意の物質」という表現が多かったという、何とも説得力のない理由からでした。

ただ、固体とは「一定の形と体積とを保っているもの」であって、そこに含まれる水分量のみによって定義されるものではないので、やはり自分訳の方が好ましいのではないか?と、このブログを書きながら考えました。

これまで読んだ明細書がどうだったからではなく、訳出時に上記のように考えるべきだったと反省です。

受動態と能動態

To prepare this superacid, alumina was stirred in 2 M sulfuric acid, filtered and calcined at about 800 degrees centigrade for about 5 hours.

公開訳:この超酸を製造するために、アルミナは2Mの硫酸中で撹拌され、ろ過され、かつ約800℃で約5時間焼成される。

自分訳:この超酸を調製するために、アルミナを2Mの硫酸中で攪拌して、ろ過して、約800℃で約5時間焼成する。

受動態はすべて受動態に、能動態はすべて能動態に訳出すべきかを悩みました。

実施例はすべて能動態で訳出しましたが、その他の部分は原文に忠実にする方が好ましいのか、そうでない場合はどう訳し分ければよいのか悩みます。

「投与量は達成する」?

The cellulose/hemicellulose enzyme dosage achieves a sufficiently high level of cellulose and hemicellulose conversion.

公開訳:セルロース/ヘミセルロース酵素の投与量は、十分に高いレベルのセルロースとヘミセルロースの変換を達成する。

自分訳:セルロースおよび/またはヘミセルロース酵素の投入により、十分に高いレベルのセルロースおよびヘミセルロース変換を達成する。

“dosage achieves…”に対して「投与量が●●を達成する」と訳出している公開訳に対して、日本語の不自然さを感じました。

十分な投与量が、●●を達成する」などであれば違和感はないのですが(「投与」よりは「添加」とか「投入」の方が良いのでは?と思いますが、ここでは脇に置いておきます)。

この文は、セルロースおよび/またはヘミセルロース酵素を「添加する」あるいは「投入する」という行為によって、セルロースとヘミセルロースが十分に変換されると言っているのではないでしょうか。

しかし”dosage”に対して「投入すること」という訳を当ててもよいのだろうか…と悩みました。

moisture content

This free water content of the solid acid material is based on the total weight of the solid acid material and the moisture content.

公開訳:この固体酸材料の自由含水量は、固体酸材料の全質量と含水率に基づく。

自分訳:固体酸物質のこの自由水量は、固体酸物質とその物質に含まれる水分量の総重量に基づく。

“the moisture content”を、明細書内に登場する”water content”と訳し分けしようと試み、「その物質に含まれる水分」としました。

Difference Between Moisture Content and Water Content

上記も参考にしましたが、満足のいく訳を当てられないまま次に進みました。

公開訳を確認したところ、”water content”と特に訳し分けがなく、どちらも「含水率」となっていました。

意味に違いがないのであれば無理に訳し分けする必要はないのか、あえて異なる用語が使用されているのだから訳語も変えて、そのように訳出しようと考えた経緯をコメントとして残すべきなのか、悩みます。

係り受け②

The present application relates to reaction mixtures comprising biomass, a solid acid catalyst and celiuloytic enzymes for converting biomass to useful feedstocks and methods of forming products via fermentation using the said reaction mixtures.

公開訳:本出願は、バイオマスを有用な原料に変換するための、バイオマス、固体酸触媒およびセルロース分解性の酵素を含む反応混合物ならびに前記反応混合物を使用して発酵を介して産物を形成する方法に関する。

自分訳:本出願は、バイオマスと、バイオマスを有用な原料に変換するための固体酸触媒およびセルロース分解酵素とを含む反応混合物、ならびに前記反応混合物を使用した発酵を介して産物を形成する方法に関する。

“for converting biomass to useful feedstocks”の係り受けについてです。

反応混合物に含まれるものとして、以下のように分解しました。

・バイオマス
・バイオマスを有用な原料に変換するための固体酸触媒およびセルロース分解酵素

しかし、バイオマスも固体酸触媒もセルロース分解酵素も、すべてが「バイオマスを有用な原料に変換するためのもの」であるので、公開訳のように訳出すべきだったのか?とも考えます。

係り受け③

The weight ratio of the biomass to solid acid catalyst used may vary widely depending on biomass type, grinding technology and process parameters.

公開訳:使用されるバイオマスと固体酸触媒との質量比は、バイオマスの種類、磨砕技術、およびプロセスパラメータに応じて大きく変化し得る。

自分訳:バイオマスと使用される固体酸触媒との重量比は、バイオマスの種類、粉砕技術および工程パラメータに応じて大幅に変化し得る。

usedに対する係り受けについてです。

この係り受けは訳出時に少し悩んだのですが、”solid acid catalyst”に係っているものと解釈して訳出しました。

この一文の前の文が、固体酸材料について述べている文であったからです。

公開訳は、usedを”The weight ratio of the biomass to solid acid catalyst”全体に係っているか、あるいは”the biomass”と”solid acid catalyst”に係っているものと解釈しています。

公開訳と比較すると、「固体酸触媒」のみに係っている自分の訳が誤っているのではないかとも思います。

まとめ

今回、初めて1時間ごとの処理ワード数を計測して自力翻訳しました。

時間を計測することによって、やはり背景知識のない部分については時間がかかること、後半になるにつれてスピードが出ることを実感しました。

スピードを意識しつつ正確な訳をするために集中できる時間は、約8時間だと分かりました。

また1時間で区切ることで、集中と休息のメリハリがついたことも良かったです。

次はEUVリソグラフィ関連の明細書に取り掛かる予定です。対訳の前に、日本語明細書を読み込みます。

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