バイオ・メディカル

バイオマス関連の対訳学習2件終了

バイオマス関連の対訳学習

バイオマス関連の2つの明細書を使った対訳学習が終了しました。

1つはバイオマスの保存、もう1つはバイオマスの加工に関する特許で、いずれも「バイオマス」、「発酵」、「細菌」のワードを含みます。

一文ずつ、「まずは自力翻訳→公開訳と比較→不足知識補充→次に進む」という進め方の対訳学習です。

以下の1件目の明細書について、誤訳など記録として以下に公開します。

【公表番号】特表2023-505735(P2023-505735A)
【公表日】令和5年2月10日(2023.2.10)
【発明の名称】保存安定性が改善された細菌バイオマスの提供

誤訳

まずは、以下のミスです。

In embodiments, this can be achieved by providing a growth chamber (e.g. a bioreactor or fermenter) with a bacterial stock and a growth medium.

公開訳:実施形態では、これは、増殖チャンバー(例えば、バイオリアクターまたは発酵槽)細菌ストック及び増殖培地を供給することによって達成することができる。

自分:実施形態では、これは、細菌のストックおよび増殖培地を含む増殖チャンバー(例えば、バイオリアクターまたは発酵槽)を提供することによって達成され得る。

「provide(増殖チャンバー)with(細菌ストックと増殖培地)」つまり「増殖チャンバーに細菌ストック及び増殖培地を供給する」という文の構造が見えていませんでした。

withを「細菌のストックおよび増殖培地を含む増殖チャンバー」と解釈してしまったのです。

翻訳時のWordを見返すと以下のように区切っていました(作業時に太字にした部分を強調しています)。

In embodiments,
実施形態では、

this can be achieved by providing a growth chamber (e.g. a bioreactor or fermenter)
これは、増殖チャンバ(例えば、バイオリアクター又は発酵槽)を提供することによって達成され得る

with a bacterial stock and a growth medium.
細菌のストック及び増殖培地を含む

この時点でproviding ~withという構造が見えていないことが分かります。

不自然な日本語

次に、以下の一文です。

Such a biomass can be prepared by fermenting a population of bacteria without pH control, or by washing the biomass with a mineral wash.

公開訳:そのようなバイオマスは、細菌の集団をpH制御せずに発酵させることによって、またはバイオマスをミネラル洗液で洗浄することによって調製することができる。

自分:そのようなバイオマスは、pHの制御をすることなく細菌集団の発酵によって、またはバイオマスをミネラル洗液で洗浄することによって調製することができる。

「発酵」と「洗浄すること」という表現が統一されていません。

それに「pHの制御をすることなく細菌集団の発酵によって」というのもおかしな日本語です。

「pHの制御をすることなく細菌集団を発酵させることによって、または~を洗浄することによって」あるいは「~の発酵によって、または~の洗浄によって」と統一するべきでした。

次に以下の文です。

As is demonstrated in the examples below, the use of a washing agent having a composition as outlined herein advantageously and unexpectedly permits the production of pharmaceutical grade bacterial biomass while minimising the loss of viable cells normally observed in such processes.

公開訳:下記の例において示されているように、本明細書で概説されている組成を有する洗浄剤の使用は、有利かつ予想外に、医薬品グレードの細菌バイオマスの生産を、そのような工程で通常観察される生存能力がある細胞の喪失を最小限に抑えながら可能にする。

自分訳:以下の実施例で実証されるように、本明細書で概説される組成を有する洗浄剤の使用は、有利にかつ予想外に、そのような工程で通常観察される、生存能力がある細胞の喪失を最小限にしながら、医薬品グレードの細菌性バイオマスの製造を可能にする。

“such processes”とは、”the production of pharmaceutical grade bacterial biomass”を指します。

訳出する場合、「医薬品グレードの細菌バイオマスの生産を、そのような工程で通常観察される~」とすることで、「そのような」が何を指しているのかが分かります。

私の訳のように、「そのような」が先にきてしまっては何を指すのかが分かりません。

翻訳時は、自分が書いたこれらの文の不自然さに気が付きませんでした。

気になった点

Further, a substantially higher (>2 log) viable cell count was obtained in the experimental runs in which a washing step was conducted.

公開訳:さらに、実質的に高い(2log超)生存能力がある細胞数が、洗浄ステップを行った実験的実施において得られた。

自分訳:更に、洗浄ステップを行った実験的実施では、生存能力がある細胞数が顕著に多く(2log超)得られた。


※画像は該当明細書の【表1】を引用

工程に洗浄ステップを含むと、洗浄ステップを含まない場合と比較して生存能力がある細胞数が多く得られたという一文です。

substantially に対する公開訳の「実質的」に違和感を覚えます。

この場合、2logを超えて増加したので、「かなり」とか「顕著に」という意味に近いのではないかと。

それから「高い生存能力がある細胞数」とすると「生存能力が高い」という意味合いにならないでしょうか・・?

まとめ

今回の誤訳について、「夜遅くに作業したから仕方がない。本当ならミスしないミスだった」という言い訳が頭をよぎったのですが、当然、仕事ではそんな言い訳は通じません。

テキストエディタ上で作業する際、機械的に文章を区切るのではなく、まずは全体をざっと読んで文の構造を理解してから実際に区切る必要がありました。

日本語の不自然さについても、翻訳後に声に出して読む、機械音声で聞くなど見直しスキームを確立します。

もう1件の明細書についてはまた別の記事にて。

今後の予定

この次は、類似明細書1件を最初から最後まで自力翻訳します。

その際、1時間ごとの処理ワード数を計測します。

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