フローサイトメトリー(Flow Cytometry、FCM)についてまとめました。
フローサイトメトリーとは
「フロー(Flow)」と「サイトメトリー(Cytometry)」からなる造語で、「細胞を流して解析する技術」を意味する。
フローサイトメトリーを行う装置をフローサイトメーターという。
フローサイトメーターには、細胞の分析のみを行う「セルアナライザー」と、分析と目的細胞を生きたまま分取する「セルソーター」の2種類がある。
フローサイトメトリーでできること
・大量の細胞一つずつのデータを瞬時に解析
・細胞の同定・分取
などがある。
フローサイトメトリーによる解析の流れ
①サンプルの処置
・溶血処理(白血球の測定では赤血球除去を行う)
・蛍光染色(細胞に目印をつける)
②散乱光と蛍光の強度を測定
細胞に傷害を与えないで流す緩衝液(シース)中に、あらかじめ蛍光物質で染めておいた細胞を流し、1つ1つを一列に整列させたところにレーザー光を当てる。
蛍光標識抗体で染めた細胞は、「散乱光」と「蛍光」が測定できる。
③解析
散乱光と蛍光の強さをもとにスキャッタグラムを作成して統計解析を行う。
散乱光と蛍光
散乱光
細胞が流れてきて、そこにレーザーが照射される。
レーザーの直進方向に散乱する光を前方散乱光(Forward Scatter、FSC)という。
FSCは細胞の大きさを反映する(大きい細胞ほど、レーザーの通過に時間がかかる)
細胞の中の顆粒にレーザーが当たって反射したものは側方で検出され、これを側方散乱光(Side Scatter、SSC)という。
SSCは顆粒の多さ・細胞の煩雑さを反映する(顆粒が多いほどレーザーが散乱)
FSCとSSCで細胞を区別
FSCおよびSSCは粒子ごとに固有であるため、血液などの試料に含まれる細胞を区別することができる。
一般的には蛍光染色による標識と組み合わせる。散乱光だけによる測定より詳細な細胞の情報を得ることができる。
蛍光
蛍光標識抗体を結合させる。蛍光色素をつけた抗体を使い、細胞に目印をつける。
細胞は「表面抗原」を持っている。表面抗原は、細胞の表面に存在するタンパク質などからなる分子で、「細胞表面マーカー」と呼ばれる。細胞の名札のようなものである。
その抗原(細胞表面マーカー)に、蛍光色素で目印をつけた抗体(蛍光標識抗体)を結合させる。
抗体は高い特異性をもつ。例えば、CD4抗体はCD4の抗原をもつヘルパーT細胞にしか結合しない。
つまり、CD4を持たない細胞には抗体が結合しないので、蛍光色素がつかない。
細胞表面だけではなく、細胞内を染色することもある。
細胞によって染まり方が異り、レーザー光を当てるとそれぞれ異なる色で光る(蛍光色素の種類や、レーザーの波長によって色が変わる)
光る色に基づいてデータをとる。
細胞を2重、3重に染色し、特定の色だけを検出する検出器を使って「赤と緑に光る物質」「赤だけに光る物質」など分類することも可能。
自家蛍光
染色に起因しない光の自然放出のこと。
細胞は光を照射すると、励起波長により蛍光を発する。大きな細胞、顆粒を多く含む細胞は自家蛍光が増加する。
自家蛍光はフローサイトメトリーのデータ解析に影響を与える。
そこで、照射するレーザーの波長を長くしたり、非常に明るい蛍光色素を用いたりすることで自家蛍光の干渉を少なくすることができる。
フローサイトメトリー応用例
・リンパ球の働きを調べる
・白血球の分類、機能の解析
・死細胞の検出・除去
・血球計数検査
・造血管細胞の測定
例えば、HIVがCD4陽性細胞(ヘルパーT細胞)に感染すると、免疫機能が低下して日和見感染により死亡するリスクが高くなる。
そこでフローサイトメトリーによってヘルパーT細胞の働きを調べ、免疫機能の状態を評価することができる。
また、血液細胞の前駆細胞である造血幹細胞(CD34陽性細胞)の評価も、フローサイトメトリーによって行うことが可能である。
造血幹細胞移植では、造血機能が回復する指標としてCD34陽性細胞が患者の体重1kg当たり2.0×10^6個含まれていれば移植細胞が定着するとされている。
参考
フローサイトメトリー入門講座
フローサイトメトリー(Flow Cytometry)
フローサイトメトリーを用いた細胞解析受託サービス
https://www.pmda.go.jp/files/000250788.pdf
YouTube
BD社 FACSフローサイトメーター(セルアナライザー編)
【誰でもわかる】フローサイトメトリー ~悪性リンパ腫を診断!~