化学・物理

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸

今回の記事では、飽和炭化水素と不飽和炭化水素、また飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸について復習しながら、関連する特許明細書を取り上げつつまとめます。

まずは飽和炭化水素と不飽和炭化水素から。

飽和炭化水素と不飽和炭化水素

飽和炭化水素

炭素と水素の単結合だけで構成されているアルカンであり、一つの炭素が結合できる最大の水素が結合しているので、飽和炭化水素という。

一本鎖である直鎖アルカンは、沸点や融点は分子量が大きくなるほど上昇する。

不飽和炭化水素

二重結合や三重結合を持つアルケンまたはアルキンであり、付加反応や置換反応などが起こりやすく、反応性が高い。

飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸

炭化水素鎖を持つカルボン酸を「脂肪酸」といい、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に大別される。

飽和脂肪酸


画像引用元:Wikipedia

飽和炭化水素鎖にカルボキシ基が結合したもので、動物性脂肪に多く含まれる。

炭素間に二重結合がない一本鎖で、脂肪酸同士が密になりやすく固まりやすい。

飽和脂肪酸を多く含む食品の例として、以下が挙げられる
・バター
・チーズ
・ベーコン
・チョコレート
・クッキー
・ドーナツ

飽和脂肪酸は過剰摂取によって冠動脈心疾患リスクを高めることが指摘されている。

不飽和脂肪酸

不飽和炭化水素鎖にカルボキシ基が結合し、植物性脂肪に多く含まれる。

二重結合を持つため折れ曲がりすき間ができる構造上、流動性を持ち固まりにくい。常温では液体として存在する。

二重結合に酸素が結びつきやすい。つまり酸化しやすい。

不飽和脂肪酸は、炭素-炭素間の二重結合の水素が同じ側にあるシス脂肪酸と、反対側にあるトランス脂肪酸に大別できる。

画像引用元:https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/trans_fat/t_wakaru/

シス脂肪酸


画像引用元:Wikipedia

天然の植物性脂肪である。

トランス脂肪酸


画像引用元:Wikipedia

その多くが工業的に生成されたものである。

植物性油脂に水素を添加することで酸素の入り込む隙をなくす。反応性が低くなるので安定化し、融点が高くなり固体化する。

触媒による水素化↓

マーガリンやショートニングなどの可塑性油脂として広く利用されている。

トランス脂肪酸による健康への影響

トランス脂肪酸は、善玉コレステロールと呼ばれる高比重リポタンパク(HDL)を減らし、悪玉コレステロールと呼ばれる低比重リポたん白質(LDL)を増加させる。

このことが筋梗塞などの冠動脈心疾患の危険因子となるとされており、長期にわたる過剰摂取による健康被害が懸念される。

トランス脂肪酸が生じる原因

・高温で加熱する過程で、シス型不飽和脂肪酸がトランス脂肪酸に変換する
・油脂に水素を添加することで加工する過程で、シス脂肪酸から生成される
・自然界では牛などの胃内でバクテリアにより生成

特許明細書

以下の特許明細書についてまとめる。

【公開番号】特開2023-8208(P2023-8208A)
【公開日】令和5年1月19日(2023.1.19)
【発明の名称】油性組成物及び該油性組成物を含有する可塑性油脂組成物

課題

課題は、飽和脂肪酸とトランス脂肪酸の含有量を減らした場合でも、オイル・オフ(液状化して分離すること)を低減することが可能な油脂組成物を製造することである。

飽和脂肪酸は融点が高く固体として存在し、トランス脂肪酸は液体の油脂を固体化したものである。

これらを含有することで、安定した固形油脂組成物の製造に貢献している。

一方で、トランス脂肪酸、飽和脂肪酸は過剰摂取によって冠動脈心疾患リスクを高めることが指摘されている。

そこで、飽和脂肪酸、トランス脂肪酸の含有量を減らした場合であっても液状化しにくい、品質が良く安全な油脂組成物を製造することが今回の課題である。

発明

本発明は以下の内容に関する。
<1>
以下に示す(a)、(b)、(c)のうち少なくとも2つ、を含む油性組成物であって、
(a)炭素数20以上の飽和脂肪酸残基を1つ以上含有するトリグリセリド
(b)炭素数20以上の一価不飽和脂肪酸残基を1つ以上含有するトリグリセリド
(c)不飽和脂肪酸結合型モノグリセリド
油性組成物の全質量基準で、前記(a)成分を含む場合の前記(a)成分の含有量が2.5質量%以上、前記(b)成分を含む場合の前記(b)成分の含有量が3.5質量%以上、前記(c)成分を含む場合の前記(c)成分の含有量が0.5質量%以上である、
ことを特徴とする前記油性組成物。
<2>
請求項1に記載の油性組成物を含み、オイルオフ値が2cm以下であり、かつ、ヒートショック耐性が0.5cm以上である可塑性油脂組成物。
<3>
5~40℃までのSFCの値が6.5%以下であることを特徴とする<2>に記載の可塑性油脂組成物。

(c)の「不飽和脂肪酸結合型モノグリセリド」は、グリセリン1分子に不飽和脂肪酸1分子が結合したものである。

(a)、(b)を含む場合、液状となった油脂を網目構造に取り込ませることが可能となる。

さらに、(c)を含む場合はトリグリセリドの網目構造が強化される。そのため(a)、(b)、(c)すべてが含まれているのが最も好ましい。

油脂の網目構造が強化されることで粘度が増し、オイル・オフが低減されると考えられる。

上記の油相と、水相(水・食塩・ゼラチンを混合して攪拌して調製)により、可塑性油脂組成物を調整する。

オイルオフ評価試験(ろ紙にしみ込んだ液状油を計測)、ヒートショック耐性試験(温度差を与えたときの試料の高さの変化)において、いずれも良好な結果を得た。

上記により、「油脂の飽和脂肪酸及びトランス脂肪酸の含有量を低減しつつ、オイルオフを低減可能な可塑性油脂組成物とその可塑性油脂組成物に含まれる油性組成物の製造方法を提供すること」が可能であることが分かる。

参考

Chat GPTや過去に勉強でまとめたノート、以下のWebサイトを参考にしました。

トランス脂肪酸
1.脂肪酸とは
トランス脂肪酸等の低減化に関する取組みについて
トランス脂肪酸って食べちゃだめなの?
あなたのLDLコレステロールが高いのはトランス脂肪酸のせいかも?

まとめ、所感

なぜトランス脂肪酸では健康上の問題が生じるのか?について書いている記事はあまりありませんでした。

AIに聞いてみると以下のように返ってきました。

以下の記事によると疫学的な調査の結果であるようです。
https://bukai.pharm.or.jp/bukai_kanei/topics/topics27.html

一旦はAIの答えを記録しておき、この裏どりはペンディングとします。

所感

学習開始直後と比較すると、「これなら読めそうだ」という明細書が増えました。

当然、読めそうな明細書の中にも理解できない部分はあります。

しかし「なぜ分からないのか?」→「〇〇に関する勉強が足りないため」の〇〇が、明確にわかるようになってきたと感じます。

課題としては、講座で言われている「引っ掛かり」を今後も増やすということです。

例えば、「Aに含まれるB」のAもBも全く分からないところから調べるよりは、Bについてある程度深く広く勉強しておけば、Aについてさっと調べるだけでAB間のつながりが理解できます。

もう一つの課題は、少し先に予定としている特許明細書の読み方、書き方に関する勉強を進めることで、内容をはやく、かつ正確に理解しながら読むということです。

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